相手のホンネを引き出すには?

「TEM 知恵の輪クラブが答えます。」

Q

相手のホンネを引き出すには?

A

まず、自らが本心を示す

人は、本心とかホンネを容易に出せるものではない。

ものにこだわらず、率直に自分を出せる人は人間的にも魅力があるが、そうざらにはいない。むしろ、見栄や体裁から自分を飾り、ありのままの自分を出しにくくなっている人のほうが多いといってよい。

それに、組織における立場や役割上、タテマエ的な発言をしなければならない場合も多く、いつの間にかそれが身について、ざっくばらんにホンネが出せなくなってしまう人もいる。

そのため、多くのサラリーマンは、昼間職場で出せないホンネを、勤めの帰りに酒場で一杯やりながら、互いに発散させることになる。

「いいたくないけどねえ」「そういっちゃあなんだがね」

飲屋でよく耳にするこれらお馴染みのセリフは、タテマエとしてはいうべきでないが、ここでホンネとしていわせてもらえば、といったニュアンスが含まれている。飲ミュニケーションの場が、説得の場としてしばしば利用されるのも、ホンネでの話がしやすいからであろう。

なるほど、確かに本心・ホンネはいいにくい。しかし、タテマエばかりの発言では、心が通じ合わない。きれいごとで言葉を飾り立てる人は、相手と本当の触れ合いができず、やがて人々から敬遠されかねないのである。

普段の心がけとして、できるだけ正直に、自分の本心を見せるようにしたい。現実を見渡すと、ざっくばらんに自分を出している人のほうが、結果的にはプラスを得ているのである。

第一に、人に好かれる。身構えている人間は堅苦しく窮屈で、嫌われる。

第二に、相手からも本心を示してもらえる。

「手は手でなければ洗えない」といわれる。ポケットに手を入れたまま手を洗おうとしても、できない相談だ。こちらがホンネを出さなければ、相手もホンネで接してはくれない。

ある食品会社の若手幹部は、

「得意先の担当役員との折衝でもっとも大事なのは、その人の人生観とフィットすることができるかどうかです」

と話していたが、相手の人生観を知るためには、こちらも心を間かなくてはなるまい。

第三に、イエス獲得の可能性が高い。

ホンネで話し合えれば余計な回り道をしないですむ。また、正直に気持ちをうちあけてくれる相手には、人間、協力したくなるものだ。

「キミだからざっくばらんに話すとね」

「課長にだけはありのままにお話ししたいんです」

「わたしはこういう男だから、率直に話すんだが」

「堅苦しい話はぬきで、ホンネで話しましょう」

こう率直に話しかけることである。人間というものは、案外、言葉に敏感である。自分を守るためにだけ行なう長々とした前おきや言いわけ、キレイゴトには、すぐそれと感じて、自らの本心を閉ざしてしまう。

本心は「顔に書いてある」

もっとも、いくらこちらが心を開いて本心を示しても相手が警戒してのってこないときは、どうしたらいいのだろうか。

このような場合は、相手の言葉だけを聞いても、本心はわからない。だが、顔や表情には意外に本心が現われるものである。

その昔、ギリシアの哲学者デモクリトスは、街角で知り合いの若い女性とぱったり出会うと、

「やあ、お嬢さん、こんにちは」

とあいさつした。ところが、翌日、再び同じ服装をした彼女に会うと、すかさず、

「やあ、これはこれは奥さん、こんにちは」

ずばり言ってのけたという。

高間直道氏はこのエピソードを紹介した後、次のように述べている。

《どうしてデモクリトスが件のお嬢さんの〝ある夜の出来事〃を、もののみごとに見やぶることができたのか。彼女の顔色、眼の動かし方、表情といったものはむろんのこと、その歩き方、ものごしといった点までもサッと眼に入れ、グッとにらんだからであろう》

―『人を見抜く法』(講談社)―

デモクリトス並みの眼力はなくても、普段から注意して人の顔色や表情、物腰などをみていると、そこに現われる本心を見逃さないようになってくるものだ。

説得するときには、自分の話だけに夢中にならずに、よく相手を観察することが大事である。

また、相手の表情が見やすいところに位置するのも大切な心得のひとつになる。

ほっとした瞬間に本心が現われる一時流行したテレビの『刑事コロンボ』はよれよれのコートを着た、風采のあがらない男だが、頭の切れる刑事で、犯人の心をじわじわと追い込んで行く手口はなかなかのものだった。彼の質問のしかたはまことにさり気ない。

「よくわからないんですが……」

「ちょっとお聞きしてもいいですか」

といった切り出し方で、一見なんでもなさそうな質問を投げてくるが、これが油断できないのだ。

コロンボが帰ってから思い当たる節を発見した犯人は彼を警戒する。次に彼が現われたときは、ボロを出すまいと、慎重に身構える。ところが、コロンボは簡単な質問を二、三して、ドアを開けて出て行こうとする。犯人はほっとして胸をなでおろす。その瞬間、こちらをむきなおり、

「ああ、そうそう。ついでにもうひとつうかがっていいですか」

このときの犯人の表情と次の言葉を、彼は注意深く見守っているのである。

人間は、緊張がゆるんでほっとした瞬間に、心の隙ができるものである。

会社でも、一仕事を終えて煙草をふかしているとき、帰りがけにくつろいだ場で一杯飲んでいるときなどに、人は案外ぽろりと本心をもらしたりすることがある、そこで、そういうタイミングをみはからって相手のホンネを引き出し、説得へとたたみかけていくとよい。怒らせて本心をつかむ時に、わざと怒らせて相手の出方をみる方法がある。インタビューのベテランは、よくこの手を用いる。人間、感情が激すると、思わず本心を現わすのが常だからである。

一例をあげよう。

いま、あなたは関連部門の担当者のところへ、つかつかと歩みよる。そして、いきなり次のようにいう。

「だいたいキミは仕事がルーズだよ」

「何が?!」

「第一、テーブルの上の乱雑なこと。これじゃあろくな仕事はできっこない」

バカにするなと怒り出す人もいれば、軽く受け流す相手もいる。後者だったら、

「ぼくも人のことはいえないが……」

と中和して、穏やかな調子に切り換える。怒り出すようだったら、もう一言追いうちをかける。

「それに、態度もはっきりしないしね」

実は現場の協力を得て、あるプロジェクトを編成する計画があるのだが、彼の態度がはっきりしない。それを暗にほのめかしているのだ。そのことは彼にもわかるから、

「それじゃ、ぼくの考えをいおう」

と、むきになってしゃべり出したりする。ただ、このやり方は怒らせるのが目的でなく、本心をいわせて説得するのが目的だから、怒らせて、その後の気まずい空気を救う手段が見当たらないようなときは、かえって説得がやりにくくなるので注意しなければならない。

彼が本心をしゃべってくれたら、一転して明るい口調で詫びをいい、しこりを残さないことだ。

「キミの考えがなかなかわからなかったものだから、ついいらいらして、当たり散らすようなことをいって悪かった、どうもボクもまだダメだなあ、ごめん」

これだけのことがさらっといえれば、以後の説得もラクになる。本心を読みとることができると、それに応じて説得のしかたも工夫することができるからである。

(TEMビQ8)

トータルEメディア出版刊

福田 健著「説得力強化書

18ページ~23ページより

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